健康や美容のためにヨガをはじめようという方は、たくさんいらっしゃると思います。
せっかく、ヨガを習っているのだから、ヨガとは本当はどんなものなのかちょっと理解してみませんか。
ヨガは、今から約6000年前にインドで生まれました。
もともとは、現在、行われているようなたくさんのポーズを繰り返すものではなく、じっと動かずに座って瞑想をするものでした。
現在の日本では、ヨガといえば美容と健康のためのストレッチのようなものと思われがちですけれども、もともとは、解脱のための哲学のようなものだったのです。
では、本来のヨガのことを、少しご紹介しましょう。
ヨガで使われるチッタとは?
「ヨーガ・スートラ」というヨガの教典があります。紀元4世紀ごろに書かれたという、ものすごく古い教典です。
これは、ヨガで解脱を目指す人のための教典だと言われています。
その「ヨーガ・スートラ」には、ヨーガ(ヨガ)とは、「心の作用の抑制がヨーガである」と書かれてあります。
この心のことを、サンスクリット語でチッタといいます。
チッタは、「マナス」「ブッディ」「アハンカーラ」という3つの要素で成り立っています。
その3つの要素を順番に紹介していきましょう。
ヨガで使われるマナスとは?
マナスのことを、思考器官と訳されたりしますけれども、いったい何のことなのか、はっきりわかりませんよね。
私達は、五感でいろいろなものを感じます。
空を見上げて美しいと思ったり、あるいは、汚れたものを見て汚いと思ったり。
綺麗な音楽を聴いて素敵だと感じたり、雑音を感じて、不愉快に感じたり。
いい匂いをかいで気持ちいいと思うこともあれば、たまらなくくさい匂いをかいで、ゲーッと思ったりすることだってありますよね。
それが、マナスです。
五感で感じて、私がいろいろと考えたり、感じたりすること。
それが、マナスというものなのです。
ヨガで使われるブッディとは?
ブッディとは、認識とか、知性と訳されます。
私達は、いろいろなものを認識します。
これはカメであるとか、これはゾウであるとか、あれは空であるとか、ありとあらゆる物事を認識しています。
これが、ブッティです。
これをカメだと認識する。
これをゾウだと認識する。
これを空だと認識する。
それが、ブッティというものです。
ヨガで使われるアハンカーラとは?
アハンカーラは、自我意識と訳されます。
私というものと、他とをはっきり区別していること。
私は、私であるとはっきり知っていること。
それが、アハンカーラですね。
このアハンカーラが、これは私のものだ! という物への執着や、私はおいしいものを食べたい! という欲望を生み出すといわれています。
ヨガの目指すものとは
前にも書いた通り、ヨガの教典「ヨーガ・スートラ」には、「心の作用の抑制がヨーガである」と書かれています。
これはつまり、チッタを構成しているもの…マナスと、ブッティ、アハンカーラの働きを抑制させることが、ヨーガの目的だということですよね。
ものすごくくさい匂いを感じて、嫌だと思ったりすること。
これはゾウであると、認識するということ。
私は、私であるとはっきり自覚しているということ。
物への執着や、欲望や願望。
そういうものをやめることが、ヨガの目的なのですね。
一点に集中しよう
心の作用を抑制させるために「ヨガ・スートラ」では、一点に集中しましょうとすすめています。
指先でもどこでもいいのですけれど、とにかく、どこか一点をじっと見つめてみましょう。
見つめる対象は、小さいものの方が、集中しやすくなります。
じっと何かを見つめたら、そこから目を離さずに、とにかくひたすら見つめ続けましょう。
この時、余計なことを考えてはいけません。
指がしびれてきたとか、夕飯の用意をしなくちゃいけないとか、もうすぐ子どもが帰ってくるとか、そういう雑念は全て頭から消してしまい、ただ、ただ、その一点だけを何も考えずに、見つめ続けましょう。
そうして、何も考えずに、ただひたすら指先などと見つめているうちに、不思議なことに、今、自分が指先を見つめているということさえ忘れてしまうくらいになります。
この状態が良いのです。
さらに、自分がここに座っていることさえ忘れてしまったら完璧です。
そういう状態を瞑想状態といい、それが、心が完全に抑制されている状態です。
ヨーガの目指す状態になっているということになるわけですね。
ただ、一点に集中するということは簡単そうで、意外とむずかしいのです。
つい、余計なことを考えてしまい、なかなか集中できません。
そんな時には、ヨガのポーズを行ってみるといいですよ。
ヨガのポーズを行った後のほうが、より一点に集中しやすくなります。
何も考えずに、ただひたすら一点を見つめている瞬間は、心配ごとや、不安なこと、いろいろなストレスから解放されて、リラックスできます。
瞑想状態までいくのは非常にむずかしく、簡単にはできませんが、ただ一点に集中してみるだけでも、リラックスができますから、ぜひ試してみてくださいね。
まとめ
健康のためや、美容のためにヨガ教室に通うことはもちろん、とてもいいことです。
けれども、身体の健康だけではなく、心や精神も元気にするということが本当のヨガなのです。
自分の心に生まれるいろんな感情から、たまには開放されてみませんか。
全てのストレスから自由になってみませんか。
夜眠る前でもいいですし、お休みの日の早朝でもいいですから、たまに、ゆったりとした時間を取り、大昔からインドで行われているように瞑想に挑戦してみましょう。